
京都大学イノベーションキャピタル株式会社

細胞膜上に存在するGタンパク質共役型受容体(GPCR)は全医薬品標的の約3割を占めるが、構造解析が難しく、立体構造に基づく合理的な創薬(構造創薬)は限られた標的でしか実現していない。近年はAIによる構造予測も進展しているが、精密な低分子設計には、実測に基づく高分解能の構造情報が不可欠である。特に、製薬企業が保有する結合力の弱い化合物の結合構造は解析が困難であり、結合様式が不明なまま開発を進めざるを得ないという課題がある。本プロジェクトでは、研究代表者が自ら開発してきたクライオ電子顕微鏡(Cryo-EM)による超高分解能解析技術と、計算科学による分子設計技術を統合し、膜タンパク質・GPCRを対象とする構造創薬プラットフォームを構築する。さらに、同プラットフォームを用いて、製薬企業と共同で新薬候補品を創出することを目指す。
製薬企業との協業を基盤とする事業モデルを想定する。まず、製薬企業が保有する結合力の弱い化合物について、Cryo-EMによる高分解能解析と計算科学による最適化を行い、リード候補化合物を取得する。こうして得られた高分解能構造情報をもとに創出したリード候補化合物を、製薬企業との共同開発契約を通じて前臨床段階でライセンス導出し、マイルストン収入とロイヤリティを得る。自社で臨床開発リスクを負わない、低固定費型の事業運営を志向する。
GTIE GAPファンド期間では、研究開発と事業開発を並行して推進する。研究開発面では、構造解析の難易度が高いClass B受容体群について、化合物複合体の構造解析を進める。あわせて、計算科学によるin silicoスクリーニングと構造ダイナミクス解析を統合し、リード候補化合物の同定とスクリーニング評価系の構築を行う。これらプラットフォームの実証を通じて、設立予定のスタートアップの技術的優位性を示す。事業開発面では、事業化推進機関である京都大学イノベーションキャピタルとともに、製薬企業へのヒアリングによる顧客ニーズの検証、経営者候補人材の探索と招聘、事業計画・資本政策の策定、受託研究・共同研究先の確保を進める。これらにより技術・事業両面のリスクを段階的に低減し、2029年4月のスタートアップ設立と、設立直後からの事業開始を目指す。