研究グループでは、これまでに音響学的な特徴を用いた機械学習モデルで2分程度の自由会話から認知症や認知症には至らないもの軽度の認知機能低下を呈するMCIの可能性を同定する技術を開発している。同技術は特許出願済み、かつPCT出願済みである。実際の金融機関で行われる顧客との会話と、昨年度までの精度向上を図った解析成果を組み合わせ、実際のビジネスシーンでの活用と運用方法、価格設計等ビジネス検討を行う。
日本国内においては、高齢者を顧客に抱えた全国の金融機関を当初のターゲットとし、営業/接客現場で行われる自由会話から認知状態を測定するサービスを提供する。金融機関は現状、高齢顧客と金融取引等を行う際に、当該高齢顧客がその取引内容・リスクを理解できるレベルの認知機能を有しているかを各営業員がそれぞれの経験・知識に基づき定性的に判断しており、その判断は揺らぎやすい。また業界団体のガイドラインに基づき、各金融機関において画一的に年齢(※例:85歳)で金融商品のセールス対象を制限している。このような現状に対して、認知機能の低下の有無を判別する技術を提供し、高齢顧客の認知機能に応じた適切なサービスを提供する。
金融機関において預金・信託取引および遺言信託のサービスを受けようとする高齢者を対象に、5分程度の会話データを、300名を目標に収集し、銀行が元来取得する改訂長谷川式簡易知能検査(以下HDS-R)の結果と紐づけする。これらのデータを用いてHDS-Rの得点を推定する、最適な機械学習アルゴリズムを作成することを目的とする。なお、本研究は被験者のリクルート状況に応じて2023年4月以降も継続する予定である。
また検証後に高齢者への営業シーンにおいての属人的、定性的な認知機能の判断を行なっている金融機関への導入することを念頭に、プロダクト化に向けた準備を行う。