脳卒中は脳損傷に伴う多彩な脳神経障害を引き起こすことから、わが国における寝たきりの原因の第 1 位であり、世界的に高齢化社会が加速する中で患者数が増加し、神経症状を改善するような有効な治療薬に乏しい状況が続いている。リハビリを行うことによって発症後 2 ヶ月間は顕著な機能回復を期待できるが、その後は脳に備わった自発的な回復力が失われていき、残存した神経症状は後遺症として患者を永遠に苦しめる。
我々は、脳卒中発症 2 ヶ月後に自発的な回復力が失われるメカニズムを解明し、アンチセンス核酸の創出によって、脳細胞の修復能力を失わせずに維持させ、脳卒中モデル動物の機能回復を持続的に促進することに成功している。本申請では、脳卒中や認知症などによって脳を損傷した患者に対して、脳細胞による自然な脳機能回復力を持続させて後遺症を軽減し、早期のリハビリ終了や社会復帰を可能にすることを目指す。
脳組織が損傷した患者の機能回復を持続させるアンチセンス核酸の薬効を増強して毒性を軽減するために、核酸の配列や化学的な修飾を最適化し、前臨床試験につなげることによってスタートアップ企業を設立する。新薬臨床試験開始申請(IND 申請)のタイミングまたは、初期的な臨床試験の結果が得られる前後において、製薬企業やバイオ関連企業への導出ができた場合には、契約一時金、共同開発費用、マイルストン収入ならびにロイヤリティ収入を見込む。
本研究開発では、脳梗塞後の機能回復を持続させるアンチセンス核酸の配列・修飾・製造過程の最適化研究を実施し、前臨床試験につなげて起業するための基盤となる技術開発を行う。事業推進機関である Venture Capital の伴走のもとに前臨床試験に向けて創薬研究を加速させるとともに、事業計画の策定・事業開発・知財戦略を精緻化し、スタートアップを設立することを目指す。医薬品による脳損傷後の機能回復が不可能である現代医療に対して、脳機能の回復をあきらめさせない、持続的な脳機能回復によって完全回復を可能にする革新的な次世代医療を実現する。これによって、要介護・寝たきりによる社会経済的な医療負担を軽減し、健康寿命を延伸させることが可能となる。