GPCR(Gタンパク共役型受容体)を標的として医薬品を開発するGPCR創薬は、これまでの主要な創薬アプローチであり、これにより実用化されたGPCR医薬品は、以前は全医薬品の5割以上を占めていた。しかし近年では新薬開発に難航し、GPCR医薬品は全医薬品の3割まで落ち込み、新たな創薬アプローチが求められている。
そこで私達は、免疫システムを調節するGPCRの細胞内領域に結合するタンパク質を探索してFROUNT(フロント)を発見した。そしてFROUNTはGPCRから誘導される正常シグナルではなく、疾患の悪化を引き起こす病因シグナルを促進してがんなどの疾患を悪化させることを見いだした。
本研究では、免疫系GPCRの病因シグナルを制御するFROUNT様分子という「新しい免疫制御分子群」を同定して、これらを標的として新薬を開発する創薬開発プラットフォーム技術を事業化して新薬の実現を目指す。
対象とする難治性疾患毎に、新たな創薬標的となる免疫制御分子を同定し、この制御薬を開発する創薬開発プラットフォーム基盤技術および創薬シーズを製薬企業に提供する。
創薬開発技術シーズおよび創薬シーズの実用化に向けて以下の研究開発活動を計画している。
① 創薬標的タンパク質ライブラリの構築:様々な難治性疾患に対する創薬標的になり得る免疫制御分子ライブラリを開発して、疾患毎に最適な創薬標的分子を提供可能な技術基盤を構築する。
② 創薬開発プラットフォーム技術の高度化:個々のGPCRから誘導される病因シグナルを特異的に調節する新たな免疫制御タンパクを同定する技術、そして得られた免疫制御タンパクの働きを調節できる低分子化合物を同定する技術を改良・発展させることにより独自の創薬開発プラットフォーム基盤技術を確立する。
③ 創薬開発プラットフォーム技術の実証試験:創薬開発プラットフォーム基盤技術を用いて、様々な疾患に対する治療薬の開発を推進し臨床研究および製薬企業連携・導出に結びつけることで、本創薬開発プラットフォーム基盤技術の有用性を実証して事業化を推進する。