起業家支援プログラム(エントリーコース)

GTIE GAPファンド エントリーコース 第4回 2026年1st 採択チーム一覧

エントリーコースは、起業を目指すGTIEに参画する大学に所属する研究者等を支援する、初めのステップとなるGAPファンドです。※研究開始は2026年1月1日を予定

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  • 創薬
  • その他
    ライフサイエンス
  • ライフサイエンス
    以外
  • シーズなし
戸田 浩史
代表者 /
戸田 浩史
Hirofumi Toda
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 (戸田研究室)
新規抗菌ペプチドの発展とその薬剤耐性菌への応用開発

近年、薬剤に対する耐性を獲得した薬剤耐性菌(AMR)が世界的な脅威となり、治療の難しい感染症が増加しています。私たちが発見した抗菌ペプチド「Nemuri」は、幅広い菌種に対して高い抗菌活性を示し、既存の抗菌薬と比較して1/4〜1/16という低濃度で効果を発揮します。さらに、従来の抗菌薬とは異なる新しい作用機序を有しており、薬剤耐性の発生を抑制できる可能性があります。私たちは、この「Nemuri」を基盤とした技術を活用し、難治性感染症に対する新たな治療法の実現を目指すとともに、創薬・製薬企業が抱える耐性化という課題を解決する技術として社会実装とベンチャー創出を推進します。

林 利有樹
代表者 /
林 利有樹
Toshiaki Hayashi
筑波大学農学学位プログラム
未利用海藻残渣を原料とする微細化セルロース(MFC等)の事業化に向けた開発と高機能材料化

近年海藻の市場は世界的に拡大傾向にある。一方で食糧・薬用等の有用物質抽出後にはその残渣が発生することになり、多くは未利用である。本プロジェクトでは未利用海藻残渣を原料とする微細化セルロースの創出と高機能材料としての応用可能性を検討する。微細化セルロースとは現行のセルロース繊維をより細かく解繊した材料であり、再生可能な高機能材料として様々な分野での活用が期待されている。一方で解繊には専用の設備が必須であり、また、材料の解繊と運搬に多くのコストを要するため広い活用には至っていない。本プロジェクトでは藻類の独自的な繊維構造に着目した独自の解繊アプローチによって従来の設備依存性と解繊・運搬上の制限を解決し、新規微細化セルロース材料としての社会実装を検討する。また、それらによって海洋バイオカスケード市場の創出を目指す。

関屋 大雄
代表者 /
関屋 大雄
Hiroo Sekiya
千葉大学 大学院情報学研究院(関屋・グエン研究室)
暗黙知を超えるパワエレ設計AIを基盤としたソフトウェア・ハードウェア・設計ソリューションサービスの三位一体型スタートアップ創出

脱炭素化・電動化が加速する中、EV、ロボット、データセンタ、再エネ機器などの基盤を支えるパワーエレクトロニクス(パワエレ)設計は、熟練技術者の暗黙知と試作反復に依存し、生産性低下や人材継承が深刻な課題となっている。本課題は、パワエレ設計に特化したAI設計支援ソフトウェアを核とし、これを用いた高周波電源および無線電力伝送(WPT)回路の開発、さらに設計ソリューションサービスを組み合わせた三位一体型の事業モデルを構築する。AIが熟練技術者の勘や経験に依存してきた従来の設計プロセスを代替し、数値最適化とトポロジ探索により新しい回路構成を自動生成することで、設計期間の短縮、試作コスト削減、高性能化を同時に達成する。ソフト・ハード・サービスを統合した事業展開により、パワエレ産業全体の設計効率と人材不足の課題を解決し、大学発スタートアップとして持続的成長と国際競争力を備えた社会実装を実現する。

生嶋 健司
代表者 /
生嶋 健司
Kenji Ikushima
東京農工大学 工学研究院(生嶋研究室)
光制御FETの開発と論理ゲート動的再構成技術の創出

製品サイクルの短縮化や多品種少量生産の加速により、専用論理回路の設計は経済的に成立しないケースが増加しており、近年、ユーザー側で論理ゲートを柔軟に再構成できるFPGAが普及している。とくに人工知能の分野では、アルゴリズムの頻繁な改良が求められ、それに伴いハードウェアを即座にアップデート可能なFPGAの重要性は高まっている。本プロジェクトでは、キャリア極性(P型/N型)を可逆的に変換可能な光制御FET技術を活用し、次世代のプログラマブル論理回路を開発する。これにより、低消費電力・高速演算を実現するポストFPGAアーキテクチャを創出し、その社会実装を担うスタートアップの設立を目指す。光制御により物理層レベルでセキュリティを堅牢化できることから、防衛・サイバーセキュリティおよびデータセンター市場を初期ターゲットとし、光制御FET-FPGAを提供するプロダクト事業とアルゴリズムを提供するサービス事業の二本柱を構築する。

坂本 卓磨
代表者 /
坂本 卓磨
Takuma Sakamoto
東京農工大学農学府・農学部
地域連携による持続可能な子豚飼料開発

ココセクフィード®は、多摩地域内にある食品事業者から排出される植物由来廃棄物を利用し、アメリカミズアブを育てて製造する子豚用飼料である。現状では生産工程に多くの手作業が残り、コストが高く養豚家への普及を妨げている。本課題では、機械化による効率的な生産方法を確立し、コスト削減を目指す。さらに、アメリカミズアブ飼育後に排出される残渣を堆肥化し、肥料として活用することで、地域内で植物生産と資源循環を実現する仕組みを構築する。

鈴木 凌
代表者 /
鈴木 凌
Ryo Suzuki
横浜市立大学 生命ナノシステム科学研究科(橘研究室)
天然素材由来高性能炭素量子ドットの創製と実用化

近年、量子ドットは幅広い発光用途で利用が拡大している一方、重金属を含む従来材料は安全性や環境規制、廃棄コストなど多くの課題を抱えている。また、有機蛍光色素は光退色が早く、長期利用には適さない。このように、高効率・高安定性と環境調和性を兼ね備えた新規発光材料が求められている。本課題では、植物種子を代表とする天然素材を原料とした単一熱分解プロセスにより、低コストかつ環境負荷の小さい高性能炭素量子ドットを創製し、その実用化に向けた研究開発を行う。作製条件の最適化や光特性向上、スケールアップ検証を進め、産業応用に耐える性能と生産性を確立する。また、研究用試薬、蛍光インク・センサー材料、光学デバイス向け共同開発など複数の事業モデルを構築し、社会実装への道筋を明確にする。これらを通じて、天然素材由来の高性能炭素量子ドットを社会に供給し、持続可能な次世代発光材料市場の創出を目指す。

蓮見 壽史
代表者 /
蓮見 壽史
Hisashi Hasumi
横浜市立大学 医学部 泌尿器科学(Research Map)
腎癌の層別化を補助するAI診断ソフト(SaMD)の開発と実用化

腎癌は最新のWHO分類で21種類以上の組織型が定義される極めて多様な疾患であり、サブタイプ診断や治療方針の決定が難しい。既存のがんゲノムパネル検査では遺伝子変異が全く検出されない症例が多く、従来とは異なる診断支援法の開発が求められている。私達は最近、希少サブタイプを含む多数症例を、全ての遺伝子の発現パターンに基づいて再配置し、これに新規症例を加えると、発現が類似する過去症例の臨床情報を直接参照可能となることを見出した(Nat. Commun. 2025 Nov 24;16(1): 10340.)。本課題では、全国の泌尿器科医、腫瘍内科医、病理医、ゲノム研究者、AI医療の専門家らの力を結集させ、この技術をAI診断ソフトウエア(SaMD)として臨床実装し、薬物療法や外科治療の最適化を図るとともに、新薬を適切な患者に届けるコンパニオン診断(CDx)として広く提供する。さらに本技術は、腎癌以外の多くの癌種へ展開可能で、がん診療全体において、患者の身体的・経済的負担の軽減、治験成功率の向上、増大する医療費の抑制に寄与する。

栄長 泰明
代表者 /
栄長 泰明
Yasuaki Einaga
慶應義塾大学 理工学部(栄長研究室)
ダイヤモンド電極を活用した CO2 資源化

本プロジェクトは、慶應義塾大学・栄長研究室が開発したダイヤモンド(BDD)電極を用いて、CO₂を高効率に電解還元し、ギ酸を生成・資源化する技術の事業化を目指すものである。ギ酸は従来ニッチな用途に限られていたが、常温液体で扱いやすく、C1 ケミストリーへの展開が可能な「ゲートウェイ分子」として注目されている。BDD 電極は選択率ほぼ100%・効率95%・1000時間超の耐久性を示し、金属電極に比べて圧倒的に高性能であり、既にラボからベンチスケールまでスケールアップが進んでいる。初期は環境価値を重視する家具・鞄メーカーや LWG 認証タンナーを顧客とし、中期には C1 ケミストリー分野へ事業を拡大する。2026年までに年間30t規模のパイロット製造を実証し、顧客獲得、EPC・化学企業との連携を進め、2028年のスタートアップ設立を目指す。

吉田 慎哉
代表者 /
吉田 慎哉
Shinya Yoshida
芝浦工業大学 Researchmap
体内情報センシングによる予防医療社会の実現に向けた安全・安価な「飲む体温計」の社会実装

カスタム集積回路および量産に適した構造設計をコア技術とするハードウェアプラットフォームを開発し、多様な飲み込み型センサの社会実装を目指す。本技術の差別化要素は、世界最小サイズ、滞留・閉塞リスクの最小化、「日常使い」が可能な低価格帯、深部体温を簡便かつ正確、連続的に取得可能、他のセンサへの拡張性である。
まずはこの技術を活用した深部体温計を上市する。これにより、熱中症や低体温症の防止、概日リズムの可視化などを実現する。さらに、pHや圧力、位置推定などの機能を搭載した多機能型上位モデルも提供していく。取得したバイタルデータに基づき、疾病や障害の早期診断、ひいてはウェルビーイングの向上に貢献するプラットフォームを構築し、ヘルスケア市場に変革をもたらすスタートアップ企業の設立を目指す。

増澤 徹
代表者 /
増澤 徹
Toru Masuzawa
茨城大学 学術研究院 応用理工学野(医用メカトロニクス研究室)
体内植込型右室補助人工心臓の実用化

心不全は世界1位の死亡原因であり、患者数が6,000万人に上る。20世紀末に植込型左室補助人工心臓(LVAD)が開発され、約5000例/年の植込みが実施されている。しかし、長期生存に伴い患者の10〜20%に生命を脅かす右心不全が併発し大きな問題となっている。右心不全に対しては薬物療法や短期間体外循環補助が現時点で取りうる治療手段であり、長期的な治療には十分ではなく、LVADと同時に植込み可能な小型の右室補助人工心臓(RVAD)の実現が望まれている。我々は20年以上に及ぶ小児用磁気浮上LVADの研究開発を通じて、成人用RVADとしても使用可能な超小型体内植込み磁気浮上血液ポンプの開発に成功している。本研究開発課題ではポンプインレット部の吸引検出・防止機構の開発と評価を行い、当該デバイスの成人用RVADへの適合性を検証し、アンメット医療ニーズに応える。

生長 幸之助
代表者 /
生長 幸之助
Kounosuke Oisaki
産業技術総合研究所触媒化学研究部門
疎水性タグ逆伸長法によるペプチド合成の廃棄物削減・量産事業化

本プロジェクトは、ペプチド医薬品の製造における高コスト・高廃棄物という課題を解決するため、独自の「逆伸長ペプチド合成法」と「新規疎水性タグ技術」を組み合わせた革新的プロセスを開発します。従来の固相合成法では不可避となっていた保護基由来の廃棄物や精製工程の負荷を大幅に低減し、非天然アミノ酸を含むペプチドの合成コストを約1/10、廃棄物量を約1/20に削減することを目指します。さらに、10gスケール超での合成実証・再現性取得を行い、既存設備へのアドオン導入を可能にすることで、製薬企業やCDMOに対し、低コスト・環境負荷低減・大量供給を同時に実現する技術パッケージを提供します。本技術は、ペプチド創薬の探索スピードを飛躍的に向上させ、持続可能な化学産業への転換を牽引する基盤となります。

村上 勝久
代表者 /
村上 勝久
Katsuhisa Murakami
産業技術総合研究所 エレクトロニクス基盤技術研究部門
半導体製造を革新する次世代電子源の開発

産業技術総合研究所で独自開発した原子層物質直接成膜技術を活用して、グラフェン/p-Siショットキー接合型の、高エネルギー単色性、大電流密度、マルチ電子ビームを実現する超高性能平面型電子放出デバイスを開発する。高スループットマルチ電子ビーム半導体検査装置向け電子源への応用を想定して、電子源実用化の最低条件である連続動作寿命700時間(約1か月)を実証する。また、半導体検査装置の高スループット化に必要なマルチビーム電子源を搭載するためのサンプルホルダーを開発し、マルチ電子ビーム源の動作を実証する。更に、事業化に向けたベンチャーキャピタルとの協議や、起業に向けた組織内での準備を行い、半導体検査の高分解能化と高スループット化を両立する次世代電子光源を実現するスタートアップ企業の設立を目指す。

審査委員

  • 石井 裕之
     (早稲田大学 アントレプレナーシップセンター・所長、理工学術院・教授)
  • 大隈 隆史
     (産業技術総合研究所 研究戦略本部 企画部 総括企画主幹)
  • 片桐 大輔
     (千葉大学 大学院 国際学術研究院/学術研究・イノベーション推進機構スタートアップ・ラボ・教授)
  • 金子 直哉
     (神奈川県立保健福祉大学・科学技術アドバイザー)
  • 河合 武司
     (東京理科大学 工学部工業化学科・教授)
  • 河原 三紀郎
     (東京大学協創プラットフォーム開発株式会社・パートナー)
  • 菊田 真吾
     (茨城大学 農学部 地域総合農学科・准教授)
  • 白石 高志
     (芝浦工業大学 SIT総合研究所・特任教授)
  • 高木 俊介
     (横浜市立大学附属病院 集中治療部・部長)
  • 竹内 利明
     (電気通信大学 産学官連携センター・客員教授)
  • 辻本 将晴
     (東京工業大学研究・産学連携本部・イノベーションデザイン機構・機構長、環境・社会理工学院・教授)
  • 中川 正樹
     (東京農工大学 大学院工学研究院・特任教授)
  • 西野 由高
     (筑波大学国際産学連携本部/本部審議役・教授)
  • 平田 光子
     (東海大学学長室・次長、経営学部・教授)
  • 山本 亮一
     (横浜国立大学 研究推進機構・教授)
  •  (審査委員リストは五十音順にて掲載。所属は審査当時のものです。)