2024/11/08
社会課題の解決志向性と持続可能な成長志向性の双方を有し、社会にポジティブな影響をもたらす「インパクトスタートアップ」と関連するエコシステムについて、アカデミアで起業支援に当たる人材や活躍中の投資家の方々などを交え、基本的事項や最近のトレンドを学ぶ勉強会を、10月31日に鉄鋼ビル内会議室で開催しました。
まず、官の立場を代表し、金融庁総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室 の長谷部綾子課長補佐より、「インパクト投資の推進に関する取組」と題して、現時点でのインパクト投資の考え方と実態、ステイクホルダー間での理解と協働を促進するための「インパクトコンソーシアム」の存在などについて話題提供がなされました。
寄付の一種とも誤解されがちなインパクト投資に関し、市場や顧客に変革と価値の向上をもたらすものがインパクト投資の性質の一つであることが強調されました。また、いわゆるESG投資との相違点について会場からも質問がなされ、リスク評価的なチェックが主となるESG投資に対しインパクト投資は社会変革という結果の観点が重視され、測定もなされる点が大きな違いであることが説明されました。インパクトコンソーシアムが設置されたのは、何らかの基準を作っていくというよりはインパクト投資を普及させ、ステイクホルダー間の協働を促進していくものであるという趣旨の紹介もなされました。
次に、官民協調の立場でインパクト投資に係るエコシステムの構築を目指した活動を展開する社会変革推進財団(SIIF:シーフ)の加藤有也事業部長より、「インパクト投資 普及と実践の取り組み」と題して、インパクト投資の現況と推進状況、取り上げられている課題や標準化に向けた検討状況等について、事例を交えながら情報提供がなされました。
欧米におけるインパクト投資の起源から、インパクト投資から更にインパクトエコノミーという考え方まで進みつつある現状の説明がありました。参加者から、インパクト投資においてはスタートアップの経済的リターンとインパクトのどちらがより求められるのか?という質問がなされ、インパクト投資においてどちらを優先するかはファンドやLP投資家の考え方次第である、今後社会起業的な起業が上場することで上場益の使い道が慈善的活動に充てられるなどのサイクルが生まれてくるかもしれない等の回答がなされました。また、インパクト投資において利用される指標の考え方に関する最新の検討状況が共有されたり大学発のディープテックを活用したスタートアップがインパクトスタートアップとして評価されることの意義に係る将来の期待感も示されました。
最後に、3号ファンドにおいてインパクト投資の推進を明らかにした慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)の中西雄基インパクトアナリストより、これまでのファンドも含めたKIIによる投資の考え方・ミッションステートメントと、インパクト投資を通じて目指している姿について情報提供がなされました。
インパクト投資を進める際には投資家と起業家間で一定のタスク負荷がかかってくるものの、よりよいコミュニケーションやデューデリエンスに役立っており、インパクト投資に係るロジックモデルを理解することでウェルビーイングなどの観点での評価に係る示唆や受益者視点での学びを起業家が得られることのメリットについてコメントがなされました。
GTIEとしては、インパクトスタートアップを一過性のブームに終わらせず、ビジネス面での成長と社会課題解決を両立した企業の登場が質量ともに充実した状態を今後目指すためには、アカデミアのディープテック発スタートアップがインパクトスタートアップとして評価されることや、インパクトスタートアップに係る研究や人材育成がアカデミアでより展開されることが大事と考えています。今後、インパクトスタートアップを目指すスタートアップがIMMを実践するワークショップや、関係者が一堂に介したイベントの実施等を予定しています。詳細はGTIE Webサイト等にて追ってご案内予定です。