がんや神経変性疾患を含む遺伝性疾患などでは、原因遺伝子に1塩基の変異が起こることで疾患を発症する例が多く知られている。本プロジェクト申請者らは、これまで困難であった1塩基変異をもつ遺伝子のみを抑制し、正常遺伝子は抑制しない次世代型の新規の核酸を用いたSNPD-siRNAという技術を開発している。本プロジェクトでは、その汎用性を確認することでプラットフォーム技術として確立し、最終的にはその社会実装をめざしてスタートアップをおこなう。すでに、これまでの研究で、細胞レベル、オルガネラ、一部マウスでSNPD-siRNAの効果が確認できている。本技術はがんや遺伝性疾患などの既存薬では治療できないさまざまな疾患に対してファースト・イン・クラスの創薬が可能な汎用性の高い手法である。
ビジネスモデルとしては、自社開発型パイプライン事業と製薬企業との共同開発によるプラットフォーム事業のハイブリッド型で事業を推進する。
・パイプライン事業:核酸医薬の設計、候補物質の最適化、非臨床試験、Phase1までは自社で、Phase2aからは企業へ導出し、契約一時金を受領する。また、開発段階に応じたマイルストンを設定することもあり得る。
・プラットフォーム事業:siRNAの設計は本スタートアップが担い、非臨床試験や臨床試験は協力して、販売は共同開発先の製薬企業とすることが考えられ、研究開発費やマイルストン(臨床開発候補薬物発見時、Phase1、Phase2、Phase3、承認申請時)、販売ロイヤルティなどでの収益を得る
本研究開発の主な活動計画は次のとおりである。
①KRASに対するSNPD-siRNAカクテルのゼノグラフトを用いた有効性評価をおこなう。標的遺伝子の変異が入りやすい複数箇所のホットスポットを同時にターゲットとするSNPD-siRNAカクテルを用いることにより、必ずしも変異部位が特定できなくても適用可能なsiRNA医薬品を開発する。
②化学修飾の最適化をおこなう。標的遺伝子抑制効果は減弱せずに、血中や組織内での安定性を高める化学修飾の最適化を行う。
③DDSの最適化をおこなう。局所投与と比較検討しながら、特に膵臓および皮膚への最適DDSを確立する。
④個別化医療に適した新規標的遺伝子に対するsiRNAのレポーターアッセイによる評価・最適化によるアンメットメディカルニーズに適用可能な医薬品を開発する。現状では、SNPD-siRNAの成功率は66.1%である。がん関連遺伝子数は500程度、それ以外の疾患原因遺伝子数は4000程度と見積もられている。そこで、本手法により、より多くの疾患に対応可能がSNPD-siRNAを構築し、プラットフォーム技術としての可能性を拡大する。さらに、設計法の改良を進め、成功率を向上させる。
⑤がんに対する初めての核酸医薬品を開発する。KRASおよびPIK3CAをはじめとするがん原遺伝子に対する実用化を進める。